FEATURE特集

INTERVIEW

『CAINOYA』塩澤隆由 氏
2023年11月に日本ではじめてTPB tech(以下「TPB」という)を導入したレストラン『CAINOYA』が
世界遺産仁和寺のある京都市御室地区にオープンした。
オーナーシェフの塩澤隆由氏に導入の理由、使用した感想をうかがった。
TPBを導入したきっかけを
教えてください。
1年前に縁があってTPBを知る機会があり動画を見たのですが、何でそこでお湯が沸いているのだろう?スポンジでさっとなでるだけで汚れが落ちるし、これはすごいなと衝撃を受けました。

その時点では当時営業していた河原町の店舗でいつか入れられたらいいねと思っていた程度でしたが、それからしばらくして店舗の移転が決まったとき、使ってみたいという気持ちが沸き起こり導入に向けて相談し話を進めました。

日本のレストランで初めてTPBを使うことになるわけですが、人と同じことをするのではなく、だれもやっていないことに挑戦したい性分なので、むしろ日本で初めて導入したレストランとして使わせてもらえたことがめちゃくちゃうれしいですね。
コンロが見えないフラットな
ワークトップが導入の決め手
ということでしょうか?
TPBのキッチンはカウンター席の正面にあります。IHは5基ありますが僕が見ても一瞬あれって思うぐらい目立たないので、お客様から見てIHがあることが絶対に分からないです。そこで突然調理が始まると、当然お客様は驚きますし喜びますよね。

ただ、導入した理由はTPBだけでなくNeoLiTH

を使えることの両方です。TPBの検討を始めた時にNeoLiTHのカタログを見てすごく格好良いと思ったカラーがメトロポリタンです。

※TPBワークトップ表面層で使用したセラミック製品の名称


器を作る時もそうなのですが、僕は単色でびしっとしているものよりも表情のあるものが好きなんですよ。メトロポリタンのアイアン調で無機質なデザインは新店舗で使用することが決まっていた新潟漆器のカウンターとも相性が良くて、これをTPBと合わせて使えることも大きかったですね。光沢などはカタログではわかりませんが、NeoLiTHショールームで実物を見てメトロポリタンがよいと確信しました。
メトロポリタンはキッチンだけでなく厨房什器にも張りました。ステンレスだといかにも厨房っていう感じですし、キズがつかず汚れが入らないNeoLiTHは清掃にかける時間が格段に違います。

なおかつ今回は床と水盤にもNeoLiTHを使わせてもらいました。床って油を吸ってだんだん汚れていってしまうじゃないですか。でもNeoLiTHはほとんど水も吸わないのでそういったことが起こらないし、すべらない仕上げのものもある。やっぱりレストランとしてずっとクリーンでいたいですね。
実際にTPBを使用した
感想をお聞かせください。
楽ですよ。営業中もよくワークトップを拭きますが、段差がないので簡単に汚れが落ちて常にクリーンにできることがいいですね。オープンキッチンのレストランで食べているのに、目の前が汚いのはいやじゃないですか。調理中の横移動も少なく済みます。

調理性能に関しては使い初めの2、3日は直火やガラストップのIHと比べてあれこれ違うと言っていましたね。ただ、スペインのトップシェフ達もTPBを使っているわけじゃないですか。ということは彼らは使いこなすことができているということになります。僕もそうなるために調理方法をTPBに合わせていくことで慣らしていきました。
IHはガスみたいにダクトが汚れないので衛生的で清掃の手間が少ないし、放射熱が少なくて調理中にほとんど汗をかくことがないのもいいです。料理人がすごく熱い状況で汗をかいて、水分を補給することによって塩加減がぶれてしまうことはよくある話です。
新店舗のオープンでシェフが
目指したもの、
その中でのTPBの
役割は何でしょうか。
いまやニューヨーク、バルセロナ、ミラノでも目にしますが、カウンター席は日本の文化ですよね。そこにただ作り置きしたものが出てくるのではなく、目の前の魅せるキッチンで仕込みをして、料理を仕上げていきます。このキッチンに加えて紅葉と立派な枝振りのしだれ桜で彩られた庭の通路をお客様に見てもらい、料理が出てきます。

コロナが明けて海外のゲストがものすごく増えましたよね。こういう人たちが伝統料理を食べに行くときには、その土地の文化を食べる側が理解しないと楽しめないと思うんですよ。でもガストロノミーや僕の店のような場合はその店の料理を食べに来ます。世界中から来たゲストがあえて京都から少し離れた仁和寺のそばまで食べに来てくれるのであれば、日本に来ているんだ、京都で食べているんだということを感じてほしいのでこういう作りにしました。

50歳になって自分がオーナーシェフとして店を出すことはこれが最後になるのでしょうが、可能な限りベストなものができたと思っています。TPBなしではここまで魅せられるキッチンは絶対実現できなかったですね。
PROFILE

塩澤 隆由

1972年鹿児島生まれ。ミシュラン一つ星を獲得し人気を博した京都・四条河原町での営業を経て、2023年11月に一軒家レストランとして京都・御室地域に再オープンした『CAINOYA』のオーナーシェフ。
『NOT THE SAME』を信念に掲げ、その枠にとらわれない革新的な料理によって世界中の食通から支持されている。

CAINOYA

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